風向きが変わる。
夕映えの窓を開けると、プランターのバジルがしおれていた。
薄紫の街路樹が生ぬるい風に揺られて騒がしい。
風向きが変わる。
夏が終わるのか。
気温はさほど変わらないが、
まぁそんな感じ。
塩バニラホイップの白パンを食べながら、遠くの青空を見る。
白パンとホイップに似たような、本当に似たような白い雲が浮かぶ。
太陽は高い位置にあって暑い。
昨夕刻に吹いていた強めの風が、翌日にはなかった。
薄紫に染まっていく街。
駅を出ると焼き鳥のにおいがした。
自分には丁度、向かい風が吹いていた。
病むほどの毎日は、きっと人生を彩らないと思った。
自分には向かい風が似合うとも、その時は思った。
風向きは変わる。
夏の終わり。
自分の影の長さが伸びた。
秋が近づいてきている。
いつの間にかほら、追い風。
時間の経過、四季のうつろい、
そんなものがだんだん風向きを変える。
いつまでも向かい風ではたまらない。
いくら似合っていても、ずっとはごめんだ。
この背中を押す風も、いつかは変わる。
前に進み続ければ、こんなふうに向かい風も追い風も、
こちらの都合に関係なく吹いてくる。
進み方を変えたなら、向かい風からは逃れられるのではないか。
愚直に前に進むのか、時に進み方を変えるのか。
考えて悩み、悩み考えて進みたい。
生きるということは、
きっと悩むことと考えることからは逃れられない。
でも深く考える必要はないんだ。
風を感じ、時々方向を調整しながら揺れる風見鶏でいい。
フラフラしたって、少しずつだって、
進む足はその人だけの道の上に違いない。
風向きは変わる。
だから、秋が待ちどおしい。
written by 日照ノ秋人