ふにゃふにゃフィロソフィー

真の父親とは、男とは何かを考えるブログです。

ボアダムスの夏

中学生の頃、おこづかいがあればCDを買っていた。

今では「CD」なるものが時代モノになりつつあり若人(Wakoudo)には信じられないかもしれないが、 当時はCDで音楽を聴くということが娯楽であり、カジュアルでもあった。

さてさて
音楽、聴いていますか?

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近所のCDショップ

いつもCDを買い求める近所のお店はとても小さかった。 それゆえ、おいてあるモノはいわゆる「流行モノ」ばかり。

悪友からオススメのバンドを教えてもらったり、教えたり。 情報は身近なところでいくつも拾えた。 レニー・クラヴィッツの「自由への疾走」のイントロを聴いた瞬間、 黒船が襲来し私のココロは迂闊に開国した為、洋楽を少しかじり始めていた。

そんな流行モノばかりのCDショップで洋楽を漁ろうと訪れた私は洋楽「B」の帯で謎のCDを発見した。

ジャケットには不気味な顔が描かれており、 説明書きは一切無い。

悪友に聞くも、誰も知らない。
お金の乏しいあの頃の私は冒険することなく、 謎のままそのCDを棚に戻した。

ラジオでは蒸し暑い日が続くと伝えている。

蝉が外でけたたましく鳴いている。

15回目の夏が始まろうとしていた。

スーパーアー

社会人になった頃、近所のCDショップが閉店した。

そんなことにいちいち想いを馳せることはなく、 謎のCDは私の記憶から消された。

そんな折り、悪友と焼肉屋で脂したたるカルビをひっくり返しながら、 ボアダムスというバンドの「スーパーアー」というアルバムが凄いと教えられた。

脂がしたたり炎上する金網よりも熱く語る悪友の熱意に胸を焦がし、 ついでにカルビも焦がした私は数日後、 照り返しの強い大通りを抜けて大型のCDショップに買い求めた。

邦楽と聞いていたため、「ホ」の帯を探す。

ボアダムス発見。

確かに「新作」と書かれた「スーパーアー」があった。 なんだこの、なんとも言えないジャケットデザインは。 怪しいな。でも売れてるっぽいしな。

謎めいたそれは、その作品独特のものなのかと思い、 他の作品も見てみた。

すると、いつか見た不気味な顔が描かれた謎のCDがそこにあったのだ。

あの夏の、アイスキャンディーをくわえながら、 自転車で走っていた頃を思い出した。

社会人になっていた私は、スーパーアーと謎のCDを手に取った。

スーパールーツ

自宅に戻った私は、とりあえず汗をぬぐいながら水色でとてもクールなガリガリくんを食べていた。

悪友のすすめる「スーパーアー」はそっちのけで、 不気味な顔のCDを開けた。

タイトルは「スーパールーツ」だった。

あの夏、謎めきすぎて購入出来なかった私の、 私だけのリベンジマッチが始まった。

1曲目「Pop Kiss」。

ぶっちゅぅぅぅ~すいっちゅぅぅぅ~

外国アニメのキス音。

それにバックではギターのテケテケ音が鳴っている。

ぶっちゅぅぅ~テケテケ。
すいっちゅぅぅぅ~テケテケ。
ポロ~ン(ギター)

1曲目「Pop Kiss」終わり。

え。

2曲目以降も民族音楽チックな打撃音とか、 うめき声とかが入っている。

これは何かの間違いか。
それとも宗教関係か。

夏のカゲロウの中で、思春期の私がコケていた。

ボアダムス

アルバム「スーパーアー」は確かにすごかった。

暗闇でヘッドフォンをして大きめの音で聴くと、 若干恐怖を覚える音楽。 以前、ポーティスヘッドの曲を聴いたときに死にたくなった恐怖とは若干違う恐怖。

ぬるま湯の20代前半の私の心を揺さぶる何かはあった。

感情を意図的に爆発させる事も、そんな場も、 今ではあまり無いのだろう。 だからこそたびたび起こるSNSでの暴走は、 単に感情を爆発させているだけの行為に見える。

音楽はひょっとしたら、鬱積した感情を爆発させる 起爆剤になるのかもしれない。

かといって、ボアダムスはちょっと難解だと思う。

後で知った事だが「スーパールーツ」は 「実験音楽バンド」であるボアダムスの 「試験的な音」を集めたアルバムであることがわかった。

試験的な・・・を売るかね。

絶叫して夏の暑さが和らぐならそうしたいが、 絶叫する事も、場さえも無い。

でも、人間たまには発狂したり絶叫したり号泣したり笑いあったりして、 ココロに溜まったエモーションを綺麗に掃除しなきゃいけないのかもしれない。

私はただ「暑いから」だけで絶叫したくなる程の夏嫌い人。

あせをふきふき。

梅雨あけて、今年の夏もどうやらやってきましたね。

written by 日照ノ秋人 早く秋が来ないかな


絶叫+リズム=熱波

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