bar 「時の扉」
日頃の喧噪を忘れ、
ひとりで飲むには居心地の良い場所。
いつものように
ひとりで飲んでいると気になる男が。
酔った勢いもあり話かけてみた。
ちなみに、男は名乗らなかった為、
仮に「T森友」としておく。
-こんばんは。
T森友:こんばんは。
-どうしたんですか、うつむいちゃって。
T森友:彼女が「愛なんて存在しない」というんだよ。
-それで傷心なんですか?
T森友:純粋がゆえに傷つく、悲しい現実。
-根が純粋なんですね、別れちゃったんですか?
T森友:「またな」といつものように別れた。
-ドライですねぇ。
T森友:痛いよ、悲しみが痛いよ。
-まぁ、飲みましょう、おかわりいかがですか?
T森友:じゃあマスター、「No.1 Girl」のカクテルを。
-え、そんなのあるんですか?
T森友:美味いんだよ、「マリア」というのもある。
-へぇ、どんな味なんですか?
T森友:心の色 にじませた罪だけがただ苦い。
-あ、苦いんですね。
T森友:弱いやつは吐いちゃうぜ。
-吐くほど呑んだことありますか?
T森友:弱音なら吐いたけど、途中下車イヤだったから耐えた。
-へぇ・・・(うまいこと話変えられてよかった)
T森友:泥だらけのエピローグさ。
-(うわっ、思い出しちゃった。)
T森友:笑えるさ。
-いや、笑えないっす。まあまあ、未練もなさそうだし・・・
T森友:いや・・・。
-え、あるんですか?
T森友:話したくはない。
-え?・・・
T森友:ありがとう、勇気づけてくれた。
-あ、そりぁどういたしまして。
T森友:Bye for now!
-あ!ちょっと!
そういって席を立ち、出て行ってしまった。
閉まりかけのドアから「素敵な別れさ」というような声が聞こえたような気がしたが、またもや伝票が宙ぶらりんのままであった。
-うん、そうだよね。
上杉:はい、さようでございます。
ちなみに店のマスターの名前は「上杉」である。
-払いますよ、キャッシュで。
上杉:ありがとうございます。
-好きでしょ?お金。
上杉:そうね嫌いじゃないけれど、なんてね。
-ちょっと、笑えない答えだな。
上杉:それ、私のですよ。
過去のbar、悪意はいっさいございません。